フィガロの返信を受けて、川口と相田は大変な混乱に陥った。
「もしかしてこれは、俺たちで乾電池に細工して【しゃちほこ】を何とかしろってことか!?」
川口は動揺を隠そうともせず相田の袖にすがりついた。
「俺は普通に外交官として今までやってきたんだ。スパイの工作活動なんてできないぞ」
「俺だってそうだ。それよりも、葉っぱがどうとか書いてるのが気になる。これは手紙のやり取りが危険だってメッセージじゃないのか。先方は手紙のやり取りを止めるらしいぞ」
「バレたのか!?クソッ!」
「落ち着け。バレていたら、こうして返事が来るものか。しかし一方的に命令されて、連絡を止められてしまうとは。止むを得まい、やるだけのことは、やろう」
「本気か?」
「細工した乾電池を作って、なんとか奴らのルートに潜り込ませるんだ」
相田の言葉を最後に、二人は黙り込んでしまった。これから自分達が挑む困難が、彼らの心に重くのしかかっているのだった。