第五章・居酒屋『モーニンググローリー』



翌日の夜、川口からの連絡を携帯に受けた相田は、指定された居酒屋『モーニンググローリー』に訪れた。相田が店に入ると、何も告げずとも店員の男が「どうぞこちらへ」と彼を奥まった個室に案内した。
(なるほど。ここがあいつの隠れ家ってわけか)
相田はビールを注文したが、それに手をつけることなく川口を待った。彼に遅れること20分程度で、川口が到着した。
「まったく、やられたよ。大使である俺になんの断りもなくスパイを送り込まれるとはな」
「敵を騙すにはなんとやら、だ。で、さっそく呼び出したってことは、まさかこんなに早く指令が来たのか」
「ああ。あの後調べたんだが、盗聴器なんかは仕掛けられて無かったから大使館でも良かったがな。HAHAHA!まあ、酒でも飲まんとやってられんからね。悪いが先に拝見させてもらったよ。なんの暗号だか皆目検討がつかなかったがな」
川口は密書を相田に手渡した。相田はそれに目を通すと、
「・・・なんだ、これは?」
と困惑の表情で川口を見た。