第四章・種族を超えた友愛


夕暮れ、スザンナを家まで送ったフィガロはひとりタヌキ岩に戻り、胸の中で燃え続けている恋の炎を鎮めるように、夕焼けを眺めながらオーガニックタバコを吸った。昨日まで違法薬物だったグレーの煙が、彼の思考をぼんやりとさせる。
(ああ、スザンナ、スザンナ・・・君はなんて素敵なんだ。集落のお見合いなんて舐めてかかってたけど、まさか運命の人に、いや、女神にめぐり会おうとは!)
フィガロの心を締め付けているのは、甘い幸せな苦しみだった。
しばらく無言で煙をくゆらせていたフィガロの耳に、聞きなれた羽音が届いた。
(おや、あの羽音はハトだ。近づいてくるようだが)
彼の予想通り、それはハトであった。しかもそのハトは、空から降りてくると彼の肩にとまったのだ。
「おや、お前は・・・オルトリンデじゃないか!伝書鳩に就職した、オルトリンデだ!」
突然の自慢の教え子の訪問にフィガロはたいそう感激した。
「どうした。お前、仕事中じゃないのか?もしかして、俺宛の手紙か?」
圧倒的にそうではないはずなのだが、魅惑の薬物が彼の判断能力を著しく低下せしめていたのだ。