太陽が最も高い位置からやや西に傾きかけた午後2時過ぎ。お互い仕事が終わってから待ち合わせをしていたフィガロとスザンナは、昨日初めてデートをして、唇を重ねたテシュプ川の川辺に今日も来た。邪馬台国の平均就労時間は午前9時から午後2時までなのだ。
「お弁当を作ってきたの。お口にあえばいいけど」
「ありがとう。じゃあ、タヌキ岩のところでお昼ゴハンにしよう」
ふたりは川沿いを歩き、人々からタヌキ岩と呼ばれている丸い大きな石の上に腰を下ろしてお弁当を食べた。
お腹いっぱいになった二人は雑談にふけった。少し肌寒い風とお互いを求め合う想いが、二人の体をぴったりと寄り添わせた。
「ねえ、フィガロはお仕事、ハト屋さんをやってるって言ってたけど、ハト屋さんっていったいどんな仕事なの?」
「うーん、どう説明したら分かりやすいかなぁ。基本、ハトを育てる仕事かなぁ」
「直球すぎて余計分からないわ」
「つまりね、世の中にはハトに対するいろいろなニーズがあるんだよ。一般的な、公園でポッポポッポ言ってるだけの奴から、手品師のパートナーとしてエンターテイメントの世界に飛び込んでいく奴、戦闘訓練を受けて軍に配属される奴。伝書鳩みたいなのもいるけど、今じゃ通信技術が発達してるからたいていスパイ活動に充てられてるね」
「まあ!ハトっていろいろできるのね」