改札を潜り、彼に向かって真っ直ぐに歩いた。


彼が私に気がついた。


私はもうどうにでもなれ、と思った。


すると彼はものすごい笑顔で私に微笑んだ。



「サチコちゃん!だよね?」


「うん。待たせてごめん。」



少しぎこちない空気、彼は雑誌を手でポンポンと鳴らした。



「とにかくちょっと向こうに移動しよう。ここ人多いから。」



私は彼について歩いた。その間会話は無かったがついてきているか彼は時々確認するためか振り返った。


ちょっとした公園にたどり着いた。



「正直、すんげー恐かったんだよね!こういうのってやっぱおかしいし。」


「私も恐かった。」


初めて近くで顔を見た。


肌は日に焼け、目はクリクリしていて人懐っこい可愛い顔をしていた。


背は私と同じくらい。パーマを当てた髪と彼の雰囲気が子犬のよう。


私がマジマジと彼の顔を見ると彼は恥ずかしそうに下を向いた。



「俺かっこよくないからショックかな?」


「そんなことない、すごく素敵。」



私は彼に微笑んだ。表情を意識して微笑んだ。


彼は恥ずかしそうに笑った。


私は彼のことを聞いた。


名前は勝司。カツジは本名だった。高校は公立のあまりレベルの高くない学校だった。入学して間もないが中学時代の友人と学区割れし、離れ離れになり学校へはあまり行っていないと。家は駅の近くだと。妹がいて、仲良くない可愛くないと言いながらも嬉しそうに話した。


私は名前を訂正し本名を名乗った。彼は私のことを綺麗でどこか不思議で落ち着いていて自分といることに違和感があると言った。


私はそう必死で顔を赤らめて言う彼を見て声を出して笑った。



彼を見つめて、彼の膝を撫でた。


彼は一気に体を強ばらせた。



「可愛いね。」



耳の側で私は彼に囁いた。


頭の中で初恋の彼をふと思い出した。


もう似たもの同士の恋愛はしないと、あのころの私は殺すと自分に言った。