―――……
「じゃぁ、この曲をもらっていくよ」
「あぁ、希望に添えてこちらも嬉しいよ。
――あの子が歌うんだろ?
馨、だったかな」
「そうだな。
正確には、馨がボーカルのバンドに歌わせる。
あのバンドはポテンシャルが高い。
この曲でそれを世間に示せたら…そう思ってる」
「そうか、それは楽しみだな。
録音したら私の所にも送ってくれよ?」
「もちろんだとも。」
笑いながら話しているお父さんと社長さん。
本当に仲良いみたいだな。
さっきの馨って人のことも、
お父さんは知ってるみたいだし。
「――…ところで、もう1つ話があるんだが…
これは依頼じゃない。
スカウトだ」
「スカウト‥‥?」
「そう、スカウト。
珠季くんを、
うちの事務所に入れたい。」
――きっと社長さんの目には、
大きなステージに立って
たくさんの光を浴びながら
声高らかに歌い上げる私が
写っていたんだと思う―…。


