そう。
お父さんは曲を残すとき、
必ず私にメロディーを歌わせる。
歌詞が無いから、普通だったらピアノとかでメロディーを弾くんだけど…
それじゃ、人間の声で歌った時と全然違う曲になるからって。
だからボイトレをさせられたり、
お父さん直々に歌の指導をされたりした。
まぁ、そのおかげで声楽で推薦をもらうことが出来たんだけど。
楽器もできるけど、
この家族といると実力不足だって分かっちゃったしね。
そういえば。
さっきから社長さんが動かない。
どうしたんだろ?
「あの…社長さん?」
目を見開いたまま、固まっている。
ブンブンと目の前で手を振ると、
ハッとした顔で目をしばたかせた。
「この曲達を…本当に君が?」
「?は、はい…
そうです、けど」
社長さんはしばらく何かを考えこむと、
私の顔をジッと覗きこんできた。
「あ、あのぉ〜…?」
「――とりあえず戻ろうか。
話はそれからしよう」
話‥‥って、何の??


