お母さんがドイツと日本のハーフで、
いわゆるクォーターな私。

そのせいか中性的な顔つきをしている。


地毛のアッシュヘアはショートにしてるし、
身長だって168センチで、やや高め。


よく男っぽいって言われるし、
社長さんにわざわざ訂正するのも気が引けるし。


黙ってバラード調に編曲されたテープを渡した。



〜〜♪…



すこしテンポが落ちて、キーの上がった音楽が流れだす。


社長さんの方を見てみると、
納得したような表情だ。





「――…うん。決めた。
この曲をいただこう。」


曲が終わる頃には、
社長さんは満足気な笑みを浮かべていた。


だから、私も笑顔で

「父も喜びます」

と返した。




すると、社長さんは思い出したような顔になった。


「あの、テープの中で歌ってたのは誰?

声質がいいね。
音域も広いみたいだし、無理のない発声をしているから耳障りが良かった。」


記憶をたどるように話す社長さんの言葉に顔が赤くなる。


それって…


「歌ってるのは…その、
私です。

褒めていただいて嬉しいです。
…ありがとうございますっ」