そして、私は岬さんにある『命令』を下された。
「髪を伸ばしたらだめだよ。
スカートを穿くのも極力避けてね。
女の子らしくするのは止めてほしい。
だけど、スニーカーを履くのもダメだ。」
「え…?
それは、何故、ですか?」
女の子らしくするのはダメ…
元々そういうキャラでは無いから、
別にかまわないけど…。
「簡単に言ってしまえば、
君に謎を作るためだよ」
「謎…――?」
「うん。
うちの事務所、『TREASURE』は本来、男しか所属していない事務所だ。
そこからデビューする人間は、普通誰もが男だと思うだろう?」
「はい、そう思います」
「しかし、君は女の子だ。
でも君は、私が女の子だと思わなかったほど中性的な外見だ。
そこで、だ。
君に敢えて女の子の格好をさせないことで、
お茶の間にはいつも通り『汐珠季は男だ』という先入観を持たせるんだ」
すごい……
岬さん、そんなことまで考えていたんだ。
確かにそれなら女だと分かったときの驚きは大きいし、
注目度も比例してくるはずだ。


