「そういえば、馨には会ったかい?」


次の日、私は会議室にいた。


今日は私の歌手としての方向性やスタイルを決める会議らしい。


昨日案内してくれた江上さんもいた。


「馨…さん、ですか。
はい、会いました。」


「そうか。
じゃあもう一緒に歌ったんだね?」


「はい。…ってどうしてそれを岬さんが知ってるんですか?」


「実は、バンドでテープの君の歌声を聞いて時にね。
『この声は誰なんだ』って皆騒ぎ出したんだよ。
それで珠季ちゃんのことを教えたから、
もしかして…と思ってね」


「そうだったんですか…」




確かに馨は、
『私と歌ってみたかった』
と言っていた。


それは、こういう意味だったのか…。




「どう思った?馨を」


まるで私を試すかのような目線で、
岬さんは意見をもとめる。


この目は、少し苦手だ。


「…透き通ってて、伸びる声だと思いました。

華奢な体つきだけど肺活量も凄そうだったし、
空間を創りだす力があるな、と」


昨日、馨の声を聴いた時の衝撃をたどった。


私と変わらない身長、華奢な体。


なのに、世界は大きかった。