事務所のビルは想像していたよりも大きなものだった。
10階建てで、奥行きがある。
入ってすぐの一階は人気も少なく、受付のおばさん1人と警備員さんが5人いるだけだった。
「あの、すいません」
「はい、何でしょうか?」
「社長さんにお会いしたいのですが…」
「……アポイントは取ってますか?」
「えっ?…はい、多分…
名前を言えば分かるはずです。
汐珠季と申します」
「……確認を取りますので、そちらの方で少々お待ち下さい」
「あ、はい…」
疑いの眼差しを向けるおばさんに戸惑ってしまった。
連絡、されてないのかな…?
忘れてるとか…?
ますます不安になりながら、
おばさんに言われた通り、
そばにあったソファに腰掛けた。
座ったら意外とフカフカで、すこしだけ気持ちが安らいだ。
それから5分程がたつと、
先程のおばさんがやってきた。


