訪れた静寂を破ったのは、
岬さんだった。
「―じゃぁ、こうしないかい?
珠季ちゃんに、一度うちの事務所へ“見学”しに来てもらいたい。」
「見学…?」
「そう。まずはイメージを掴んでもらいたい。
事務所には、スタッフはもちろん所属タレントもやって来るしね。
1日体験でもする気持ちで、来てみないかい?」
1日体験、か…
確かに、興味はある。
「それはいいね。
芸能人にも会えるしな!」
あはは、と呑気に笑うお兄ちゃんは置いといて。
うん。
百聞は一見に如かず!
「じゃぁ…迷惑でなければ…
見学、してみたいです」
おずおずと岬さんを見ると、微笑んでくれた。
その時に寄ったシワが、少しだけお父さんに似ていた。
「じゃぁ年明けの、4日に」


