「わ、私をですか?
あの、でも私はそんな器量じゃないですし、
歌も十人並ですし…」
「…何言ってるんだ!!!」
ビクーーーッッ
私の謙遜に声を荒げたのはお父さんの方だった。
「え、お父さん…?」
「珠季は世界一かわいいし、世界一歌が上手いし、世界一優しい子だ!!
岬が惜しむのも当然だぞ!」
「あ、ありがとうお父さん」
何だかお父さんたらすごいこと言ってるけど…
でも嬉しいな。
たまにしか会えない私を、こうやって大事にしてくれて。
「そうよ!
珠季ちゃんは世界一よ!」
「そうだぞ!
珠季はいい妹だぞ!」
ドアからの声に振り向くと、
さっきのお父さんの声でやって来たらしいお母さんとお兄ちゃんがいた。
そう言ってくれるのはすごく嬉しいんだけど…
「あの、2人とも…
服、着替えてきたら…?」
お母さんはネグリジェで、
頭には取れかかったカーラーが付いてるし、
何故か手にはシュタイフのテディベア。
お兄ちゃんに至っては浴衣だから、
前がきれーにはだけてもはやパンツ一丁。
長めの黒髪は無重力に暴れていた。


