秘密と生きる君




「テメーふざけんなよッ!!」

「うるせぇ!!少しは黙れよ!!」

そんな声が響いた時、ガタッと音がした。
片方の奴が椅子を持ち上げた。
そして、もう一人の奴に投げ付けようとした時───


「危ねぇアキ!!」



その椅子は投げ付けた奴には当たらず、アキの方へ飛んできた。

───その時。

ガッ!!



アキは椅子の背もたれの部分を掴み、空中で止めた。な、なんていう反射神経なんだ……



「もー。危ないなぁ」



アキは焦ることもなく、とても冷静に見えた。
そして、掴んだ椅子を床にそっと下ろした。



「お前……。大丈夫なのか……?」

「え?何が?」

「何って……。椅子飛んできたじゃん」

「あぁ。大丈夫だよ。だって俺、ちゃんと止めたじゃん」

ニコニコしながらアキは答えた。

いや、あれは有り得ないだろ。
神業過ぎるだろ。
何が起きたか一瞬解らなかったし……。



「この学校ならこんなの日常茶飯事だからさ。自分の身は自分で守らないと死んじゃうよ?」

「ま、マジかよ……」



俺はゾッとした。
毎日がこんな危険だなんて認めたくない。
俺、現実逃避しちゃうかも……。

俺が硬直していると、



「大丈夫!ハルがこの学校に慣れるまでこの俺が守ってあげるから!」

自身気に言うアキ。
俺も男だ。
男が男に守られるなんて情けない。



「ありがとうアキ。俺も男だからな。早くこの学校に慣れるようにするよ」

「うん!頑張って!」



アキは俺の手を握って微笑んだ。

こいつ、ホントに男なのか……?
仕草といい、雰囲気といい、女だったら絶対にモテると思う。
少なくとも、俺は好きになってしまうかも……。