「単三乾電池?」


意外な要求に洋子は驚いて、弥生の言葉を繰り返した。


「弥生ちゃん、単三乾電池って……どうしたの?」


「……テレビのリモコンが、調子悪いんです」


「リモコン?」


「はい。テレビのリモコンが調子悪いから……パパが……」


「パパにそんなことで怒られたの?」


「いえ……違います、けど……」


洋子は目の前で俯く弥生を見た。


顔の左頬にある青い痣。


もう11月も半ばだというのにコートも着ないで佇む少女の短いトレーナーの腕からも痛々しい痣が覗いていた。