「……今夜は集中してテレビなんか見れないわね」


林 洋子はため息と共に吐き出した。


それどころか、今夜眠れるかどうかも怪しいものだ。


隣に住む佐野という男が、テレビ音量を最大にして娘への暴力の音を掻き消そうとしていることなんて、このアパートの住人なら誰でも知っている。


それでも聞こえないはずはないのに。


皿の割れる音も。


男の怒鳴り声も。


少女の泣き声も。


まだまだ、これからも続くのだ。


深夜まで……。