「妻の入院中は、大変お世話になりました」


弥生の母親を支えていた男がそう言って、洋子に菓子折りを差し出した。


「妻……?」


洋子は疑問を口にしながら差し出された菓子折りを受け取った。


「……先日、入籍しました」


男が言葉少なに言い、弥生の母親も黙って会釈をした。


「まあ……おめでとうございます。こんな……ご丁寧に、ありがとうございます。何かしら?」


洋子が差し出された箱に視線を移すと、洋子の頭の上で男の低い声が聞こえた。


「……生八ツ橋です」