友愛荘に住む人全てが少女に、時には父親に、手を差し延べた。


何度となく父親に注意をし、行政にも連絡を入れた。


しかし効果は得られない。


少女は、助けを拒む。


病気で入院中の母親と離れ離れになること


その母親を置いてひとり、父親から『逃げること』


それが少女にとって、何よりも犯しがたい『罪』だった。


やがて、周りの人々は思う。


『本人の意志を尊重しよう』


そうやって、友愛の名の元にアパートの住人は今夜も102号室で起きている暴力をただ息を潜めて見守っていた。