洋子は落ちた真新しいハンカチを拾い上げ、弥生に差し出した。


「素敵なハンカチを持ってるのね、これ、オーガニックコットンね」


「パパから貰ったんです」


弥生は嬉しそうに笑ってそう言うと、


「洋子おねえちゃん、そのハンカチを濡らして欲しいんです。顔を冷やしたくて……お願い出来ますか?」


「もちろんいいわよ。どうぞ、そこは寒いから入って待っててちょうだい」


「ここでいいです」


「でも……」


「よそのお家に入ると、お父さんに怒られるからここにいます」


洋子はそれ以上何も言えず、そっと頷いた。