その時、


隣の扉の隙間の中、ドア内側のノブを掴む手を、洋子は見た。



「あ、ちょっと……!」


そしてそのまま、バタンとドアが閉まる。


「まったく……」


洋子が苦々しくそう言うと、


「ごめんなさい……」


目の前の弥生が消え入りそうな声で洋子に言った。


「あ、弥生ちゃんに怒った訳じゃないのよ?」


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


泣きながら謝り続ける弥生。


洋子は弥生を慰めようと、優しく声をかけた。


「大丈夫よ、弥生ちゃん。もしまたパパに怒られたらいつでもいらっしゃい?」