偽りばかりの僕だけど。君への想いだけは正直で有りたい。
「…は、上等。そんなに想うなら俺から奪って行け。」
簡単にはやらねぇけど、と笑う藤咲は。とても優しい瞳をしていた。…少しだけ淋しい青が映ったのは、気付かない振りしてやるよ。
僕は。オマエが護ってきた人を今日、奪うよ。
「あらら。北の頭は、俺に負けず劣らずイイ男じゃねーか。」
ひゃは!と笑う千鶴は、相変わらず空気が読めてない。
全くどいつもこいつもウザイんだよ。…僕がなんだか情けないみたいじゃないか。僕も隠れてちょっと笑って。…あぁ。本当にもう、どうしようか。めーちゃんに逢いたくてしょうがない。
今なら僕は。
最強のヒーローになれると思うんだ。
僕と藤咲は少しだけ視線を交えて、右手に力を込めた。その直後、足は床を蹴り真っ直ぐ前へ駈け出していた。

