天然なあたしは悪MANに恋をする

「何するんですかっ!」

あたしは抵抗しようと腕を動かすが、大男の指が二の腕にきつく食い込むだけで何の効力もなかった

「…ざけんなよ。族長に何しやがる」

後頭部から血を流しながら、地面に倒れていた立宮先輩が大男の足首を掴むと、苦しそうに言葉を吐き出した

『おいっ、早くしろ、こっちは無事に捕まえたぞ』

黒色のワゴン車の助手席の窓があいて、男の声が聞こえてきた

「はあ? あんたは族長なんかじゃねえよ」

大男が、立宮先輩の腕を金属バッドで叩いた

「ああっ!」と、痛みで顔をゆがませる先輩を横目に、あたしは大男に引っ張られるがまま、車に乗り込んだ

「お前の大好きな兄貴に知らせるんだな! 女を助けてくださいってな」

大男が窓から、大笑いをすると、車が発進した

何、この人たち…何なの?

みんな、青いツナギを着てて…なに?

男が後部座席のカーテンを閉めようとしたほんの一瞬、通勤途中であろう片岡先生と目が合った気がした

「おいっ…今のって元赤のチョーじゃねえか?」

大男が助手席に座っている男に、声をかけた

「ああ? 知らねえよ。元赤族なんて怖くねえだろ。もう族を抜けた男なんて、何の力もねえよ」

「馬鹿か。青と赤は違うんだよ。赤はなあ…」

「別に今の赤に知られなきゃ、怖くねえんだよ」

「ああ、知られなきゃな」

大男はあたしの顔をぎろっと睨むと、顎で、車の奥に行けを指示をした

あたしは大男から目を離さないようにして、車の奥に行った

「ねえ、同じ学校の子よね?」

横から聞こえてくる女性の声にあたしは驚いて、顔を動かした