レンはクスっと笑うと、あたしの肩を抱いたまま、窓際に向かって歩き出した

「あ…あのさ。これってあたしが、立宮先輩のところに戻れば平気?」

レンの眉がピクっと反応すると、じろっとあたしの顔を見た

レンは物凄く怖い顔をしていた

「馬鹿か?」

「だって、レンがこんなことされるなんて。あたしには信じられなくて。あたしのせいなら…あたしが…」

レンの指先があたしの唇に触れた

え?

レンの親指と人差し指が動くと、あたしの唇を痛いくらいに摘まんできた

「それ以上、言うな。言ったら、ミズでも許さねえ。俺は、決めたんだ。いいか、一度しか言わねえからな。よぉく、聞いておけ」

レンがごくっと唾を飲み込んだ

「俺は、まわりを気にするのをやめた。俺が感情のままに動けば、ミズを傷付けると思ってた…だが、それでミズが他の男に取られるくらいなら、俺はミズを選ぶ」

レンの指があたしの唇から離れた

あたしは瞼をぱちぱちと開閉したあと、背を向けたレンの制服の裾を掴んだ

「あ…あの…」

「一度しか言わねえっつったろ」

「でも…よく意味がわからないんだけど…」

あたしの言葉にレンの肩ががくっと落ちた

「わからねえんなら、それでいいよ」

「嫌だよ。もうちょっと詳しく言って…」

「無理」

「言ってよ」

「無理っつったろ」

「じゃあ…あたしのこと好き?」

「はあ? 馬鹿なことを言ってんじゃねえよ」

背を向けているレンの耳が真っ赤になるのがわかった