バタンと車のドアが閉まる音が近くで聞こえた

バタバタと誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえると、ふわっと抱きしめられた

「誰に泣かされた?」

低い声だけど、聞いたことある声だ

あたしは、鼻水を啜りながら、顔をあげるとそこには立宮先輩の顔があった

「あ、あれ? 電車で帰ったんじゃ…」

「途中で面倒くさくなっちまって…家のヤツを呼びつけたんだ。んで、車の中で瑞那が泣いてるのが見えて…て、誰がやったんだ? 怖い思いをさせられたんだろ? やっぱ俺が、家まで送れば良かった」

立宮先輩が、心配そうな面持ちであたしの顔を覗き込んでいる

あたしは首を横に振ると零れ落ちる涙を、制服の袖で拭いた

「ちが…違います。ちょっと、幼馴染と言い合いになっちゃって」

「菅原か。忘れちまえよ。あんなヤツ」

「え?」

「好きなんだろ? 俺といたほうが、瑞那が笑って過ごせる。俺が瑞那を幸せにしてやるから」

立宮先輩が座り込んでいるあたしの肩をぎゅっと抱きしめてくれた

どうして、立宮先輩はあたしに優しくしてくれるのだろう

どうして、レンはあたしに冷たいのだろう

あたしは立宮先輩の制服の裾を掴むと「はい」と返事をした