天然なあたしは悪MANに恋をする

「家まで送るってば」

立宮先輩があたしの最寄り駅に降りると、改札を出ようとする

「大丈夫です。ほんとに家、近いですから。先輩の家って、1つ前の駅だったんですよね?」

「ああ、まあ。そうだけど、こっから歩いて帰ろうと思えば十分帰れる距離だし」

立宮先輩は別に何ともないと言わんばかりの顔で、さらりと口にする

「いえ…先輩の帰る時間が遅くなってしまうので」

あたしの言葉に、立宮先輩が不思議そうな顔をした

「…てまだ9時半だし。俺にとったら、まだたいした時間じゃねえよ」

「それでも…大丈夫ですから」

「わーったよ。じゃ、家に着いたらメールしろよ? 無事についたかどうか心配だし」

「はい。今日はありがとうございました」

あたしは深々とお辞儀をした

「なあ、瑞那って彼氏いんの?」

「え? いませんけど…何か?」

あたしは小首を傾げた

どうして、立宮先輩がそんな質問をしたのか、あたしにはわからなかった

「そっか。じゃ、俺と付き合え。今日から瑞那は俺の彼女な」

ニカッと立宮先輩が白い歯を見せて笑うと、手を振って歩き出した

え? 今、なんて言ったの?

「あの…ちょっと」

あたしは立宮先輩の言葉を聞き返そうとするが、先輩は反対側のホームに行く階段を駆け上がってしまった

今、『付き合え』って言われた?

告白とかじゃなくて、まるで命令みたいな感じで『付き合え』って言われても、困るよ

そりゃ、彼氏がいないけど…好きな人はいるよ

全然、諦められなくて、何度も振られてるけど…この恋に望みや希望なんてないけど

それでも好きな人はいるんだよ、立宮先輩!

あたしの気持ち、ちゃんと理解してくださいよ

一人でどんどんと決められても、困りますよ