天然なあたしは悪MANに恋をする

あたしたちは、学校の隣街にあるゲームセンターにやってきた

先輩に勧められるがままにプリクラを撮り、エアホッケーをやり、車のゲームもした

ゲームセンターに来るのが初めてで、あたしは面白かった

家のテレビゲームとはまたちょっと違う感覚で、次から次へと先輩のお財布に入っているお札が100円玉へと両替されていく

レンの弟がゲーム好きで、遠目にゲームをしている姿を何度か見ていた

目を悪くしても止められないと、レンの弟が言っていたけれど、今ならなんかその気持ちがわかる気がする

面白くて、ついつい「もう一回やりたい」と口走っているあたしがいる

先輩のお金なのに、あたしは大はしゃぎしていた

「やべえ! もう9時過ぎてるぞ」

先輩が腕時計を見て、目を丸くした

「え?」

あたしも目を大きく見開くと、携帯の液晶画面で時間を確認する

『21時03分』と表示されている

その画面の下には、電話の着信マークがあり、『8』と横に数字が入っている

8回も誰かから電話がかかっていたのに、あたしは全然気づかずに遊びに夢中になっていた

着信履歴を見ると、8件全部に『菅原蓮耶』の名前が並んでいた

レンから?

5時から30分おきに、電話がかかってきている

どうしてレンが?

もしかしておばさんに、電話するように言われたのかな?

あたしはレンに折り返しの電話をしようとするが、その手を立宮先輩に握られた

「帰ろうぜ。送っていくから」

「あ…平気です。ここからだと電車で一本ですし、駅からそんなに離れてませんから」

「いいから。送るってば」

ぐいっと立宮先輩に手を引っ張られた

「あ…あのっ。ほんとに大丈夫ですから」