天然なあたしは悪MANに恋をする

「ミズ、行こう」

レンがあたしの肩をぐっと押した

「レンは知ってたの?」

「あ?」

「あたしが立宮先輩に利用されてるって」

「なんとなく」

「え?」

「確証がなかったから、自信はなかった」

「なあんだ」

あたしは鼻から息を噴射した

「は?」

「だって、レン…他のヤツに取られるくらいなら…とかなんとかって言ってくれたのは、あたしが好きだからだと思ったんだよね。でも、先輩に利用されないために言っただけなんだって思ったら、なんか気が抜けちゃった」

「え? …ちがっ」

「あたし、平気だから。一人で、もう大丈夫!」

「ちょ…はああ?」

あたしは、にこっと笑顔を見せると、学校の門を小走りで走り抜けた

「ミズ、待てよ」

「嫌だよぉ。崎先生に怒られたくないもん」

あたしは鞄を振りまわしながら、教室に向かった

「…っだよ。俺の……を、無視しやがって」

レンが、ぼそっと吐き出した言葉が背後で聞こえた

「え? 何?」

あたしは足を止めて振り返ると、レンの鞄が後頭部にぶつかっていく

「うるせえよ。もう言わねえ」

「え? 何を?」

レンが、制服のブレザーを翻しながら、あたしを追い抜いていった