「有紀さぁぁん!慶たんいる~!?」

外の冷たい空気を連れて、大声で叫びながら女の子が駆け込んできた。

紛れもなく坂口亜由美だ。
まさか、こんなに早くここで会えるとは思ってなかった。

「あらあら。亜由美ちゃん、ちょっとこっちへいらっしゃい。」

この女性は有紀というらしい。

「花村 凛ちゃん、あなたと同じ学校で同じ学年なんですって!」

私は有紀に紹介されて、頭を軽く下げる。

すると亜由美は私を一瞥して、

「こんな子、知らなーい。」

とだけ言ってカウンターの裏に入っていってしまった。

これが、私と亜由美の初対面だった。