亜由美は、慶太の膝に手を乗せたままじっと一点を見つめている。

「あのさ、」

私が言いかけると、

「亜由美、ダメな子だねぇ。」

と、亜由美がポツリとつぶやいた。

「あんな噂があったじゃん。友達いなくなっちゃうし、知らない人からは変な目でみらっれちゃうし。
優奈の事、疑うわけじゃないけど。でも。」

私はようやく気が付いた。
どうして亜由美が拒否していたのか。

違う。拒否じゃないんだ。警戒してたんだ。

私は、亜由美の隣にしゃがんで、亜由美の肩を抱いた。

「気付かなくてごめんね。」

どうしてそんな事に気付かなかったんだろう。

私は自分を責めた。

すると、亜由美は

「優奈は亜由美が慶たんの事、本当に好きだって知っても誰にも言わないよね?
雪乃ちゃんにお似合いだからって、連れていっちゃわないよね?」

と、私の腕にしがみつく。

「優奈は、そんなことしないよ。もし、そんなことがあったら、私もカミングアウトするから!ね?」

そう。その時は私も亜由美と一緒に好奇の目にさらされよう。

亜由美と一緒なら耐えられるんだから。