亜由美も負けん気が強いし、喧嘩にならなければいいけど。

私は、静かな店内に響く自分の足音を聞きながらカウンターの裏側に入った。

狭い作業台にはチョコチップの入ったマフィンが並んでいた。

無事にこれにありつけますように。

私は心の中でそう唱えて、狭い通路を進んだ。

マフィンから視線を逸して前を見ると、亜由美がしゃがみ込んでいるのが見える。

絶対私に気付いてるはずなのに、こっちを見ようとしない。

これは優奈の希望に添えないかもしれないと、絶望感が襲ってきた。


私は駄目は元々と腹をくくって亜由美に声を掛けた。
「亜由美?ちょっといい?」