無口な王子様

それは亜由美への気遣いだった。

有紀さんは亜由美がふて腐れている理由を見抜いていたのだ。

ここに来ればいいと思った優奈はがっかりしている。

シュンとして雪乃ちゃんの髪を撫でている優奈を見て、私は申し訳なく思った。
「ね、亜由美?」

亜由美を見ると、どうしていいか分からないといった表情をしていた。

でも、気持ちは変わらないらしい。

「ゴメン。」

亜由美はそれだけ言って、まだカウンターの奥で待機中の慶太の方へ行ってしまった。