「で、目的地はどこなんですか?」



葵さんがようやく、口を開いた。




「それは、お教え出来ません」



「にしては、隠すつもりは無さそう。ねぇ、雫ちゃん?」



「えぇ、窓ガラスがスモークで覆われているとか、そういうものは一切ありませんからね」



窓の外は、木々が生い茂っていた。
森の奥に向かっているようだ。
それから、彼――白井――は、何も言わなかった。
それが動揺なのか、元々そういうシナリオなのかは、誰にも分からなかった。







何かが引っかかってる。
何かを、忘れてる。



心の奥の違和感に、不安を覚えた。