でも、笑うカミーユを見て、思ってしまった。

そんな素敵な笑顔もできるんだ……。

ちょっと小憎たらしく笑ったと思えば、子供のように満面の笑顔で笑う。

めちゃくちゃだけど、憎めない。

まるで、神様と悪魔が同居しているみたい、だ。

カミーユの笑顔に不覚にもみとれてしまっていたわたしは、ここで重大なことを思い出した。

「カミーユ!!のんびりしてる場合じゃなかった!エリザさんが連れていかれちゃったの!」

カミーユがスッと真顔になって言う。

「どういうことだ?」

「…今夜彼女を買った人物がいて…でも危険な人らしいの。エリザさんの旦那様で、カミーユの腹違いのお兄さんだって…」

カミーユの顔がみるみると深刻な表情に変わっていくのを見て、わたしの脈も速まる。

「…ジル・ド・レイ…!」

噛みしめるように言ったカミーユの唇が、最後にギリ、と口端を噛む。

「…カミーユ…?」

「…とにかくここを出よう。エリザも心配だが、君も早くここを出たほうがいい。シセはオレの見たところ、蛇のような男だからね」

先ほどのシセの蛇のような目つきを思い出して、ゾクリ、とした。