「…どうして、ですか?」

思わずそう聞いてしまったわたしの単刀直入な質問に、彼女は嫌がる様子でもなく、話し始めた。

「カミーユはね、わたしが結婚させられると聞いてすごく反対したわ。一緒に逃げようとも言ってくれた。でも、わたしが彼を裏切って結婚したのよ。家を捨てることはできなかったし、それがわたしの運命だと諦めた」

「…でも、それは仕方のないことです。エリザさんが悪いわけじゃ…」

わたしの言葉に間髪入れずにエリザは答えた。

「わたしが結婚したのは、カミーユの兄よ。腹違いのね」

「腹違いの…お兄さん…!?」

少し高くなった声が地下室に反響した。

「わたしの夫は、ジル・ド・レイと言って、資産家の家で育った。カミーユは、ジルの父親の愛人の子で、ずっと日陰で育ってきた。でも、強欲で金になるもの全てを手に入れたがるジルの母方の祖父ジャン・ド・クランがカミーユとジルのどちらかを莫大な財産の相続人にすると宣言した。彼は二人を闘わせることでさらなる財産を得ようと野望を膨らませていたのね。わたしは…自分の父親がすすめるままに、より莫大な財産の相続人に近いジルを選んだの……最低の女よ」

自嘲気味に笑うエリザの肩にそっと触れると、彼女は微かに瞳を泳がせた。

「でも…カミーユは……あなたを憎んでいないと思います。じゃなきゃ、こんな所まで来ないわ」

彼女のカミーユへの罪の意識が、きっと彼女をこんな所へ引き寄せてしまったんだ。

…このままじゃいけない。

なんとかして、二人を会わせてあげなくちゃ。

「エリザさん、わたし、絶対あなたとカミーユを会わせてあげる!!」