「ヴォークルールが攻撃されるなんて…」

ジャンヌは眉をしかめて、土を蹴った。

「ジャンヌは何度かヴォークルールに行ってるもんね」

手をつなぎながら、ジャンヌの横顔を見上げる。

ジャンヌは3年前よりだいぶ身長が伸びた。

肩まで伸びた栗色の髪はとても女性らしいけど、キリッと伸びた鼻と、ますます意志の強さを増した唇とは不似合いだった。

ジャンヌは今年の5月から2度に渡ってヴォークルールに行っていた。

でもイザベルお母さんはビュレ・ル・プティに行くものだと信じていた。

ビュレ・ル・プティは、イザベルお母さんの従兄弟で農夫のデュラン叔父さんが住んでいる所で、ヴォークルールに行く途中にあり、ジャンヌは叔父さんの手伝いを頼まれた、と言っていたからだ。

でも結果、ジャンヌの目的はヴォークルールにあったということがわかった。

ジャンヌは優しい叔父さんに案内してもらい、ヴォークルールの城に行き、守備隊長のロベール・ドゥ・ボードリクールに会っていたのだ。

なぜそんなことをしたのか。

ジャック父さんは、2度に渡って守備隊長に失礼極まりないことをしたジャンヌを責めた。

ジャンヌが守備隊長に向かって堂々としゃべった言葉はこうだった。