家に帰ると、ダイニングから楽しげな笑い声が響いた。

ジャンヌ、カトリーヌ、そしてお母さんが、先ほどの傷のある図体の大きい男を目の前にして、体を激しく揺らして笑い転げている。

男は少し照れたような表情で頭を掻いていた。

いったい何が起こったのかわからずに戸惑っていると、ジャンがみんなを制止するように口を開いた。

「おいおい、ミシェルは河に落ちて溺れかけたんだぞ。笑ってる場合じゃないだろう。ジャンヌ、いい加減にしろ」

それを聞いたジャンヌはハタと笑うのをやめてずぶ濡れになったわたしを見た。

「河に落ちたって…ミシェル…それ本当!?」

「うん」と言いかけたわたしの声に覆いかぶさるように男が突然、床に突っ伏してジャンヌを仰ぎ見た。

「すまない、ジャンヌ!!まさかジャンヌの妹だとは思わなかったんだ。許してくれ!!」

ジャンヌはわたしに「ミシェル、無事?」と訊いてうなづいたのを確認すると、仕方がないというように必死に謝る男の前に膝をついた。

「仕方がないね、ミシェルが無事だったんだから。でも、罰として教会で告解3日間。まずは神様に許してもらいなさい。わたしの許しをいただくのはそのあと」

そこでまたカトリーヌとお母さんが笑う。

男はジャンヌに心から感謝しているような顔で笑った。

ジャンはあとで、この不思議な出来事のなりゆきを説明してくれた。