†神様の恋人†

このあとの記憶ははっきりとしない。

だけど気がついた時、わたしは水の中ではなかった。

生温かい空気が急激に喉に入り込んでくる。

それと、唇にはりつく柔らかい温もり。

「……っぐ、ごほっ…ごほ!!」

激しく咳き込んで思わず起き上った。

水を一通り吐いて、ふと我に返ったわたしの目の前で、長身の若い男が膝をついていた。

……だ……れ……?

フランスの澄んだ青空のように綺麗なブルーの瞳が、品定めするかのようにわたしを見つめていた。

旅人のような頭巾をかぶってはいるけど、透けるような金色の長髪を首筋で結んで胸元まで下げている姿はどことなく上品に見える。

白い肌に鋭角な顎と見事にバランスの取れた顔のパーツに、わたしはしばらく声を失った。

村で一番かっこいいのはジャンだと思っていたけど、こんな素敵な人がこの村にもいたなんて。

その瞬間、ピンッと鼻をはじかれてわたしは「いったぁっ!」と声をあげた。

「なんだ、生きてるじゃん。銅像のように動かないからオレのキスに酔い過ぎて窒息死したかと思ったよ」

……き、キス―――!?