「ジャンは本当にミシェルが好きね。ミシェルが困っちゃってるわよ」

ジャンヌがからかうようにジャンを睨みつける。

「なんだよ、ジャンヌ。お前はまた鐘つきのペランの所に行くんだろ?今日も鐘ならなかったもんな」

からかわれたジャンが、お返しというように皮肉を言う。

だけどジャンヌはその皮肉も跳ね返すほどの激しい憤慨を見せた。

「そうだ!また今日もペランったら教会の鐘を鳴らすのを忘れたんだから!ほんとに頭にきちゃう。鐘が鳴らなかったらお祈りができないじゃない!」

ペランは隣の教会の鐘つき男だ。

彼はよく鐘を決まった時間に鳴らすのを忘れる。

歳はジャンヌよりかなり上のおじさんなのに、13歳のジャンヌがその大の大人に食ってかかったのは見ものだった。

ペランがどんなにたしなめようとしても、言ってることはジャンヌの方が正論なのだ。

ジャンヌは、溢れんばかりの信仰心と、正義感に満ちていた。

「あ~、思い出したら頭にきた!ペランの所に行ってくる!」

縫物をテーブルに投げ捨て、ジャンヌはズカズカと足音をたてて家を出て行った。

「行ってらっしゃ~い!」

邪魔ものはいなくなれとばかりにジャンは手を振ると、縫物をしているわたしの手から布を取り上げた。

「ジャンヌもいなくなったことだし、行こうか、ミシェル」