「ミシェル…怖いんだ。わたしが一番怖いのは…男じゃない。こんなことで、“神の声”を無駄にするかもしれない自分が…怖いんだ…!」

「…ジャンヌ…!!」

ジャンヌは泣いていた。

カトリーヌが亡くなって以来、初めて泣いていた。

男性を恐れていては何も成し遂げられないというジャンヌの不安。

わたしは、初めてジャンヌの弱さを知った。

あんなにも気丈で、強気なジャンヌが初めて見せた弱さ。

神様は、ジャンヌの不安までは取り除いてくれなかったのだ。

でも、わたしはジャンヌが最初にしがみついてくれたのが自分で、とても嬉しかった。

それだけで、ここに来て良かったと思える。

「ジャンヌ。大丈夫だよ。神様はきっとジャンヌを護ってくださる。神様はジャンヌを独り占めしたいほど愛していらっしゃるんだから」

ジャンヌはそこでやっと顔を上げてわたしを見た。

そして涙を拭いて、クスリと笑った。

「ありがとう。ミシェル。そうだね。“処女を護れ”なんて、神様はひどいヤキモチ焼きだ」

「そうよ!いっそわたしみたいに男装しちゃったら?そしたら男性なんて怖くないし、神様も男性恐怖症なんてジャンヌの不安を取り除いてくださるかも」

お互いに冗談を言って笑いあう。

ジャンヌは空いっぱいの星を見上げて言った。

「エトワール(星)か……あの星全部を詰め込んでも足りないくらい、神の愛は大きい。わたしの小さな器でも、その愛を受け止めることができたらいいのに…」

ジャンヌこそ、神がこの世に与えた大きなエトワールの一つなのだ、とわたしは思った。