「ミシェル!!」

宿屋の『クロエ』の前に到着した直後だった。

2階の窓から外を覗いていたらしいジャンヌが興奮気味の声でわたしを呼ぶと、そのまま窓から姿を消した。

そしてあっという間に下まで降りてくると、わたしに向かって走ってきた。

「ミシェル!!」

再びわたしを呼びながらきつく抱きしめるジャンヌ。

「よかった!3日間もいなくて心配したんだ…どこもなんともない?」

嬉しそうに涙を浮かべながらわたしの顔を見つめるジャンヌに、胸が熱くなった。

「ごめんね、ジャンヌ!なんともないよ。本当に心配かけてごめんね」

「事情はカミーユ・ド・クランから聞いたけど、もうこんな無茶なことはしないで。いいね?ミシェル」

強く言い聞かせるように目をじっと見つめるジャンヌに、わたしはうなづいた。

「うん、わかった。でもジャンヌ…カミーユを責めないで。わたしが自分から言い出したことだから」

そう、結局わたしが決めたことだから。

ジャンヌは少し驚いたような目で見つめたあと、カミーユに向き直って言った。

「カミーユ・ド・クラン。もう済んだことは責めない。でもまたミシェルを危ない目にあわせるようなことをしたら、わたしが神に代わって罰するから覚えておいて」

真顔で言うジャンヌに、カミーユは騎士のように片膝をついて敬礼した。

「ジャンヌ・ダルクと神に誓って」