「当時、お母さんには恋人がいたんだって。じゃあなんで?って思うでしょ?」


「うん」


「…運命だったんだと、思うんだ」


「うん…めい…」


私は頷いてまた続けた。



「お母さんはその日付き合ってた人と観覧車に並んでたの。で、お父さんも。一人で並んでたの。お父さん、一緒に来てた友達とはぐれちゃって…観覧車でさがそうと思ったんだって。」


私は窓の外の夕日に目を向けた。


「でもその日、すごく観覧車が混んでて、お母さんたちの後ろにお父さんは並んでたんだけど、一人だったからお母さんたちと一緒に並んでるって係員さんに間違われて、押し込まれちゃったんだって。」


「え、三人?」


私はクスクスと笑った。


「ううん。お母さんとお父さん」


「え!?まじで?」


「うん。おかしいよね。お母さんのそのときの彼氏、取り残されちゃったの。そこで、二人は出会うの」


私は夕日を見ながら微笑んだ。



「それで、付き合ったの?」


「…まだ続きがあるの…聞きたい?」


雅人君はうんと一度頷いた。


「そのときはただ話しただけで終わったの。観覧車降りてから、お父さん、お母さんの彼氏にずっと謝ったんだって。で、話はそれから二年後。それぞれ社会人になって、たまたまお父さんもお母さんもその遊園地に友達と来てたの。」


「彼氏とは?」


「あれからすぐに別れちゃったんだって」


「それで?」


「うん。それでね、お父さんたら、また友達とはぐれちゃって。また観覧車に並んだんだって。そしたらね、たまたまお母さんも友達とはぐれちゃってて、一人で観覧車に並んでたの。」


「もしかして…」


「そ、またお母さんのうしろにお父さんが並んでて、混んでなかったんだけどカップルと間違えられてまた押し込まれちゃったの」


雅人君はははって笑った。


「それが運命の出会い。…でもね…そんな出会い方をしても私が物心つく頃には、不仲になって、それぞれ外国に行っちゃった…」