「ちょっと、美穂ちゃん。
どういうことだよ?」

健二が横から割ってきた。

「俺は、観覧車を止めろなんて頼んだ覚えは……」

どうやら、あれは美穂のアドリブだったようだ。


「まあまあ。
うまくいったんだし、いいじゃない。
おかげで、社員さんにこっぴどく叱られたんだから」

当たり前だ。

あんなことしたら、怒られるに決まってる。


それにしても、と私は健二を見た。

健二まで私をおとしいれるのに一枚かんでいたとは、意外だった。

純情そうに見えて、案外そうでもないのだろうか?

デート中の健二のぎこちなさは、告白前で緊張していたからではなかったのだ。

演技がうまくいくかどうか不安だったのだ。

結果的に、私は勘違いしたわけだけれど。

ゴンドラで、手をつないだりしなくて本当によかった。


「美穂」

私は美穂をにらんだ。

「ん?」

美穂は目を丸くした。


「明日、ケーキバイキングでおごりだからね」