状況が状況なだけに、彼女の足元にまで目がいく余裕はなかった。
改めて見て、確信した。
忘れもしない。
この白のヒールは、あのとき、透の部屋の玄関に並べられてあったものだ。
やはり、この女が浮気相手だったのだ。
それにしても、透はいつ頃からこの女と浮気をしていたのだろうか?
あの日からまだ一ヶ月半と経っていない。
けれど、どうも付き合い始めたばかりのカップルには見えない。
もう何年も一緒にいるような空気が、二人の間に流れているように感じる。
とすると、かなり以前から、透は浮気をしていたのだろうか?
あるいは、時間など多くは必要なかったのかもしれない。
それほど、透とこの女は相性が合っていた。
私なんかよりずっと……。
そう思うと、なんだか切なくなった。
