一ヶ月半前――。


透(とおる)の誕生日のことだった。

その日はバイトがあったので、彼には会えないと言ってあった。

それは嘘だった。

バイト帰りに、突然彼の一人暮らしの部屋を訪ねる。

バースデーケーキを見せて驚かせる。

そういう作戦だったのだ。


部屋の前に着いたときは、もう夜中の十一時頃だった。

ノックする前に、バースデーケーキの箱を開けた。

彼の大好きなイチゴがところせましと盛られている。

真ん中の板チョコには、「ハッピーバースデー とおる」とある。


私は、ニンマリして箱を閉じた。


ドアをノックした。


返事はない。


いないのかな?


耳をそばだてた。


ボイラーの音がする。

シャワーを浴びているようだ。