《聖姫様ダメ?》



(可愛く言っても私だけで決められる事じゃない)



先程クルトに感じた嫌な考えを拭い去るどころか、益々疑念が深まった。


美琴はカイルに“助けて”と視線で訴えてみた。



カイルはそれが分かったのか、困った顔をしたが、ちゃんと助け舟を出してくれた。



『クルト美琴を困らせるな!!

今逢ったばかりで何故美琴の側に居たがる?何を企んでる?答えてみよ!!』



《…………》


一瞬言葉を失ったが、クルトは瞬時に冷静を取り戻し誤魔化した。



《俺はただ聖姫様が気に入っただけなのにどうしてそんな酷い事を言うのです?》



目を潤ませ訴えるクルトは、誰もが同情しそうだが、胡散臭い芝居じみた嘘に
アラン、カイル、美琴は騙されなかった。


アランは美琴の時も最初から疑った程警戒心が強いだからクルトも同様に先ず疑う筈だ。


カイルは人の上に立つ身だ。

人を見る目もあるし、命を狙われることも多い
だからクルトの僅かな邪心を見抜いていた。


美琴も人の邪心に敏感だからクルトを疑った。




「人を疑うのはよくありません。

クルト君は美琴様が好きなだけですよ!?」



「私はカイル様と美琴様に仕える身、御二方の意思に従います。」



イリュウは人を疑う事を知らないお人好し

サリーは主人に逆らう事を許されない立場だ

予想通りの返答にカイルは笑みを浮かべた。