『3章』

「うわっ」
「きゃ!」

二人が急な事に驚いていると

「ああ、澤島さんとこのお嬢さんじゃないか」

巡回中のお巡りさんが言う。

「こんばんは」

一美は少しでも表情を見られたくないのか、深々とお辞儀した。

「いやね、なにやら声がしたからね、喧嘩でもしとるのかと思ったんだよ。そっちは彼氏かい?」

泉は無言でお辞儀をする。

自転車は駅前に置きっぱなしにしてきたので、安心だった。

「今からね、ちょうど澤島さんとこに書類を渡しにいこうと思ってたところなんだよ。パトカーで送っていくから乗りなさい」

二人は顔を見合わせ、渋々パトカーに乗り一美の家に送ってもらった。

一美の父親は家に帰っていた。

泉がお礼を言い、帰ろうとすると、一美の父が止める。

「まあまあ、家には連絡しておくから夜ご飯食べていきなさい。」

泉は一美の父親の職業で培われた迫力におされ、有無を言わさずに一緒に食卓を暖める事になった。

一美の父親が作ってくれた夜食を、3人がほとんど喋らず一通り食べる。

ぎこちない雰囲気が漂う最中、

“ぴんぽーん”

玄関のブザーが鳴る。