「で?何で美容院?」
「五月蠅い。失恋したら髪を切るのが昔からのしきたりでしょう」
勿体ないのに。
そう彼は言う。
「お待たせしました。今日はどんな感じにしますかー?」
あたしの担当が男の人だってことも、春基のスネる原因になっているのだろう。
嫉妬心強いのか?
「こんな感じで」
鏡の前に座りながら、待っている時に見ていた雑誌を渡した。
「わかりましたー」
さわさわと、あたしの髪が揺れる。
――――鏡を見ながら
校庭の、銀杏の木を思い出した。
二人には、その近くを歩きながら気持ちを伝えた。
11月の寒い日だけど
秋に落ちた、銀杏の実が独特の香りが鼻をつく。


