「待てよ」
はしっと腕を掴まれる。
「いつも一緒に居るんだから、お前が誰を見てるか位わかる。
それに、お前が見てる相手が 誰を見てるのかも」
「………」
彼は気付いていたのだ。
テツがアミを好きだという事に。
「たまにテツと二人でこそこそ話してるだろ。
内容までは聞いてないけどさ、
お前の顔が辛そうに見えてた」
そんなことまで気付いているの?
テツが気付かなかった事に、なんであんたが気付くの?
「それに、お前の親友もテツの事が好きなんだろう?
それで中間に居る楓が相談を受けてる。違うか?」
「………違わなかったら 何よ。春基には……ッ」
“関係無い”
言いかけて やめた。
だってそれは、余りにもひどい言葉だと気づいたから。
「…お前だけが辛い思いしてるんなら
ほっとけるわけ無いだろう」
ポツリと呟いた彼の表情が今にも泣きだしそうだったから
「馬鹿だよ、春基は。
あたしのことであんたが傷つく必要なんてないじゃない」
溢れだしそうな涙をぐっとこらえて
笑顔でそう返してあげたんだ。


