見せられたのは、真っ白なマルチーズ。
「ど?可愛いっしょ」
「うん…」
本心からそう思った。
自然と笑みがこぼれる。そうだ。あたし、犬好きなんだった。
「良かった」
へへへッ 彼も笑う。
「良かったって、大げさだね。誰が見ても可愛いよ、加藤くんちのワンちゃん」
「違うよ」
?? きょとんとするあたしの鼻先に、彼はちょんっと触れると
「涙止まったみたいだから」
そう言った。
外はもう夕暮れで、
春先なのに秋を思わせるほど
真っ赤に色付いた
空と山がとっても綺麗だった。
ただ、きっと。
あたしの顔の方がそれをしのぐ程の赤さだったに違いない。


