爆風によって加速するコーラル。一瞬にしてグレアムとの間合いを詰め、模擬刀を横薙に振り抜く。
 グレアムはそれを大剣で受け止め、目の前のコーラルに向かって左足による回し蹴りを放つも、それは見事に空を切った。
 その場に残るのは焼け焦げた床石と鼻をつく焼臭。
 左足の魔力爆炎によってグレアムの回し蹴りを回避したコーラルはすぐさまグレアムの背後に回り込み、模擬刀による刺突を繰り出す。

 人間の死角、背後からの一撃。
 誰もが勝利を確信するであろう完璧な一撃。

 しかし、コーラルの模擬刀には手応えがなく、その場にグレアムの姿はなかった。

「惜しかったな」

 背後から浴びせられる冷たい声。
 それと同時にコーラルの首筋に突きつけられる一振りの大剣。

「……参りました」

 模擬戦はグレアムの勝利で幕を閉じた。

「コーラル、お前も随分成長したな」

「負けたってのに……嫌みですか?」

「俺に魔法を使わせたんだ。大したものだよ」

 グレアムの両足には緑色の魔力光。
 コーラルのブレイズレギンスと同じアビリティスペル、『スラストフェザー』
 風の魔力によって自らの体を押し出し、瞬発力とトップスピードを跳ね上げる魔法だ。
 コーラルと同じく、グレアムもまたこういったアビリティスペルを得意としている。